囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
手塚先輩の言う〝香白〟というのは、付き合いのある旅館の中でもトップクラスの旅館だ。
私も一度しか泊まった事はないけれど、料理も豪勢だったし部屋も綺麗だったし、会社の歓送迎会でしか旅館なんて泊まった事のない私でも、いい旅館なんだなって分かるほどだった。
香白は、他の支店にももちろん人気だし、日程が重なると旅館側も団体客をそう何組も受け入れられないしで、取り合いになったりもする。
だから、香白に決まるかはまだ分からないけれど。
例え、香白だったとしても、今回は大崎くんも加わるわけだし……なんだか賑やかな送迎会になりそうだなと、少し気が重たい。
でも、きっと仕方ない事なんだと思う。
「大崎くん、酔わせたらまた面白い告白するかしら」
手塚先輩が面白がってそんな事言い出すから余計に。
「あれから何もないの?」と聞く手塚先輩に「ないですよ」とげんなりとしながら話す。
「花岡さんが、やたらと私と大崎くんをくっつけようとするから困ってる感じです」
「あー。花岡さんにしたら、及川さんと仲がいい深月なんて邪魔なだけだもんねー。
深月、これ再鑑印もれてるから印鑑もらっていい?」
「はい。あー……これ多分大崎くんが再鑑してたヤツです。千円札五十枚に手つりそうになってました」
「大崎くん、手先不器用そうだものねー」
「でも、最初から見ればだいぶ速くなりましたけどね」
隣の大崎くんのデスクから印鑑を拝借して、再鑑印を押させてもらう。
それから手塚先輩に伝票を返すと、「大崎くんは掃除?」と聞くから頷いた。