囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
「泊まりだからってあまり飲みすぎないようにね。許容量超えた挙句、温泉なんて入ったら酔いが回って本当に危ないんだから」
締めも無事、数字が合ったし、残っている作業は簡単な整理だけだ。
だからか、どこの課からも会話が聞こえてきてフロア内はざわざわしていた。
そんな中でも、先週、異動宣告を受けた花岡さんだけは、あれからずっと暗いオーラをまとっているけれど。
「あ、はいっ。気を付けます」
「営業の人みんな強いから、同じペースで付き合ってたら簡単に潰れちゃうから気を付けてね」
手塚先輩が引っ張った変なレールから、無事会話が外れる。
そこに胸を撫で下ろしながら、手元にある、今日一日分の伝票を、トントンと揃えてとりあえずゴムで止めていると。
大崎くんは「ありがとうございます」と言った後、にこりと嬉しそうに笑った。
「深月さん、優しいですよね」
これはなんか……手塚先輩のレールではないけど、そっち方面の雰囲気を感じて「おおげさだよ」と早い段階で話を切る。
……なのに。
「いや、優しいです。いつも周りに気を使ってるし、俺の事だって迷惑かけてばっかなのに見捨てないでいてくれるし」
「見捨てるって……だってそういうのは貫井代理が決める事だから。
私はコーチャー交代って言われるまでは、ちゃんとコーチャーやるだけだし」
「それに、今みたいに俺の事心配してくれるし、さっきだってみんなにコーヒーを……」
と、そこまで言った大崎くんが何かを思い出したようにピタリと止まる。
そして「そういえば……」と、疑惑の目で私を見た。
「及川さんって、前から深月さんの事名前で呼んでましたっけ?」