囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
手塚先輩もいる中での爆弾発言に、内心うわっ、このタイミングで……と焦りながらも平然を装って笑う。
「あー、いつもは名字だけど、たまに名前で呼ばれるかも。
及川って誰に対してもそうだし、入社してすぐの頃からそんな感じだから、あんまり気にした事なかったけど」
じろり、と動いたのは手塚先輩の瞳だ。
ひとり、空気を氷のように冷たく感じながら笑顔の演技を努める。
「あ、そうなんですか。なんか最近よく聞くから、どうしたのかなって思って」
「及川、気まぐれだから」
「へー。私は聞いた事ないけど、及川さんって深月の事名前で呼ぶんだー」
ギクッて音を立てた心臓を抑えこんで、ひたすら笑顔を作る。
「たまにですけどね」
もうとっくに揃えて輪ゴムまで止めてある伝票を忙しなくトントントントン揃え直していると。
「初めて名前で呼んでるの聞いた時には、その、恋人だとかそういう関係になったのかと思って焦ったんですけど」
悪気ゼロで核心をついてくる大崎くんが「でも、違うんですよね?」と真面目な顔して聞いてくる。
「ただの……同期だよ」
そう答えた私の声は、震えていなかっただろうか。
手塚先輩が一体どんな目でどんな表情で私を見ていたかは、恐ろしすぎて確認できなかった。