囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~


「今まで遊んできた子と深月は違うよ。……って言っても、分かんないか」

及川の、なんとか微笑んでるみたいな表情に、分かるよって咄嗟に言おうとしたのに……声にはならずに消えてしまう。
そんな私に、及川は尚も微笑んで「深月が俺の事まだ信じらなくても当然だよ」と言った。

きっと及川は、私が及川の気持ちをちゃんと信じられない自分を責めてると思って言ったんだと思う。
自分自身を責める必要なんかないんだって、私は普通なんだって。

及川を信じたいのに、今までの事実がそれを邪魔して、信じきれない自分が嫌で……なのに、及川が優しい言葉をかけてきたりするから、泣きそうになる。

黙ったままぐっと俯くと、及川も少し黙って……それから、「華、こっちきて」と私を呼んだ。

顔を上げられないまま、おでこを及川の胸にポスッとつけるとふわりと抱き締められ、そのうちに力がこもる。

オレンジ色の照明が包む部屋。
及川の声が胸から響いて聞こえる。

「信じなくてもいいからさ、俺の事捨てないで」

そんな、切ない声が。

「……今までポイ捨てしてきたくせに」
「それは言うのなし」

過去は過去で今は今。
今までの子と私は違う。

分かってるよ、そんな事。分かってるけど……。
割り切れない気持ちが確かにあって、その壁がなかなか越えられない。

だって、今までの子と私は違うだなんて、そんなの及川にしか分からない事だ。
分からないのに、私は他の子とは違うんだって信じ切れるほど、自分に自信だってないから。

不安が消せない。


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