囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~


「だってさっき営業の人と話してたから。〝及川はまたナビとして深月さん乗っけてくのか?〟って。
多分、誰が誰の車乗るかで振り分けしてたんだろうけど」
「ああ……あれって、そんな感じで決めるんですね。支店長とかが勝手に振り分けてるのかと思ってました」
「ね。私も初めて知ったんだけど。でも、考えてみれば深月って毎回及川さんの車だったような気がして、そういう事だったのかって。
でも、深月だって道強そうじゃないのにナビなんてできるの?」

いや、できません。とも言えずに、まぁ少しは……とだけ答えて誤魔化す。

及川がなんで私を乗せたがるかと言えば、神経質な部分があるからだと思う。

助手席に誰かを乗せたりするのは嫌だけど、でも営業の中では若いし、そうなれば、じゃあ及川がって事になるのは自然の流れだ。

体育会系のノリってわけではないものの、年功序列みたいな部分はある。
私だってもし預金課の中で誰か……って話があったら、じゃあってなるとは思うし。

そんな暗黙の了解で車出しになったものの、自分の車の後部座席ならまだいいにしても助手席にはちょっと……って思った及川が私を利用したんだろうと予想する。

支店内の誰かを乗せるなら……っていう消去法で。

まぁ、勝手にそういう事情にされていたのは驚いたけど、私にとってはプラスにもマイナスにもならない話だから別にいいかと片付ける。

「及川の車には他に誰が乗るんですかね」
「さぁ……。でも、早々に花岡さん着替えすませて下りて行ったし。もしかしたら一緒かもね。
ナビもやるから助手席乗るとか言い出しそうよね」
「ああ……なんか画が目に見えるようですね。手塚先輩は、誰の車かもう分かってるんですか?」

何気なく聞くと、手塚先輩はこの世の終わりみたいな顔して目を伏せる。




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