囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
「車、預金課からは大崎くんが出すって言うのよねー……。今までは、さすがに女性に出させるわけにはいかないって貫井代理が出してくれてたじゃない。
だから今年もそうだろうなって思ってたのに、なんと大崎くんが出すとか言うからもう……旅館にたどり着く気がしない」
「大崎くん、免許持ってたんですね」
「仕事に向かう姿勢みたいにウォー!みたいに運転されたらって思うと……私、三半規管弱いのよね」
「でも、仕事はあんな真っ向勝負みたいな感じですけど、運転はまた別じゃないですか?
真面目だから全部きっちりしてそうだし」
「だといいんだけど。私は多分、貫井代理と一緒に大崎くんの車だから、それを願うしかないわよね。
出られる?」
「あ、はい」
一泊旅行用の鞄を持って更衣室を出ると、下から「もう出るから急げー」という営業の声が響くから、トントンと階段を下りる。
全員が出てから最後に貫井代理がドアの施錠を済まし、支店の周りを一応見回りしてから駐車場に向かった。
真夏の18時前は、太陽の姿こそ見えないものの、まだまだ明るい。
暖かいをとうに通りこし、暑いも通り越したような気温に、ただ駐車場まで歩いただけなのにじわりと汗がにじんだ。
せっかく一週間の仕事が終わったのに。
これから泊まりで仕事の延長と言える送別会に行くと考えると足取りも重かった。
送別会をするのに反対だとかそういう意味ではなく、何も泊まりじゃなくても……というのが役職にはついていない職員の正直な意見だと思う。
誰だって気を使う上司と一緒に泊まりだなんて居心地はよくないだろうし。
及川なんて、相部屋事態を好まないから、嫌だろうなぁと思いながら駐車場に行くと、もう残っている車は二台だけだった。