囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~


大崎くんが乗っている、意外にも可愛い感じの乗用車に、貫井代理と手塚先輩が乗りこむのを、横目に見る。

それから、及川のスポーツタイプの乗用車に近づくと、運転席の窓を開けた及川に、鞄をトランクに入れた後、助手席に乗るように言われる。

トランクを閉めてから助手席のドアを開けて……ガランとした車内に気付いた。

「あれ。他に乗っていく人いないの?」
「本当は営業があとふたり乗っていくハズだったんだけど、ひとりは他の車に余裕があったからそっちで先に行った。
もうひとりは旅行鞄忘れたとかで家帰ったから、途中で拾っていく」
「先に行ったのって、なんで? そんなに急いでたの?」
「花岡さん用にって、色紙に寄せ書き書いただろ? あれ、始まりが遅かったから営業にまだ回ってきてなくて宴会始まる前に完成させなきゃって言うんで急いでたから」
「あー、そっか。今週ずっと花岡さんデスクいたし、引継ぎ作業なのか遅くまで残ってたから書けなかったんだよね」

バタンとドアを閉めてからシートベルトを締めると、及川がゆっくりとアクセルを踏み発車させる。

異動になってしまった人への色紙への寄せ書きはもう絶対だし、花岡さんもうすうす分かっているとは思う。
だから、そこまでこそこそする必要もないのかもしれないけれど、だからと言って本人の前では書けない。

そう思って、いない時を見計らって書いていたら、回りが遅くなり、営業に回るのが今日になってしまったようだった。

「花岡さん、この車に乗りたがらなかったの?」

絶対に乗り込んでくると思ったのにと、意外に思って聞くと、及川が笑いながら答える。

「いや、なんか乗りたそうにはしてたけど、花岡さんが振り分けられたのが支店長の車だったから。
さすがにそれ蹴ってこっちに乗りたいなんていう事は言えなかったんだろ」
「あー……そっか」


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