囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
及川の車にはナビがついているけど、行き先は設定していないようでナビゲーションは静かだった。
及川も迷うそぶりは見せずに、前だけ向いて運転している。
それを眺めながら、「私、旅館までの道分からないんだけど」と言うと、及川は、はっと馬鹿にするように笑う。
「分かってるけど。だって深月、ショッピングモールで既に道に迷うし。そもそも多分地図読めないだろ」
「分かってるならいいんだけど、及川が私を助手席に置くのはナビ代わりだって言ってたって、手塚先輩から聞いたから」
「周りにはそういう事になってるんでしょ?」と聞いた私に、「あー、そうそう」と、そういう事かと言った風に言う。
「営業って、車の運転荒いだろ」
「まぁ……大人しくはないかもね」
勉強のうちだと一緒に営業活動することもあるから、そのときは営業車に同乗する。
そのたびに、そんな速度でこの道を……?!とか、今のは強引だったんじゃ?とか、ハラハラすることがあるといえばある。
多分、いつも使っている道や車への慣れもあるんだろうけれど。
その点、及川は運転に慎重だから乗っていても安心だ。
よく耳にする、車の扱いと女の扱いは重なる、なんて言葉は嘘だったんだな、と及川で実証されたなぁと眺めていると、及川が言う。
「普通の道でも、危ねーなぁと思う事あるのに、旅館までの山道運転されるとか怖いだろ。
だったら俺が自分で運転して深月乗せてった方が安心だし。でも、それそのまま言ったら角立つから、方向音痴って事にしてあるけど」