囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~


旅館について、鞄を部屋に置いた後、宴会場に行くともう料理が運ばれてきていた。

旅館で歓送迎会が行われる時、男性職員はいつも宴会に浴衣で現れる。

しかも首からタオルをかけていたり、顔を蒸気させていたりで、ただ浴衣に着替えただけではなさそうで。
いつの間に温泉に入ったのかが、いつも不思議でならない。

けれどさすがに私と一緒に旅館についた及川と須田さんは、ただ浴衣に着替える時間もなかったからか私服だった。

あらかじめ引いていたくじで割り当てられた場所に座る。
大部屋の中、〝コ〟の字に並んだ御膳の上には、色とりどりの季節の食材を使った料理が乗っていて、おお、と思う。
お酒の席だし、あまりじっくり味わえないものの、おいしそうな料理は嬉しかった。

花岡さんはこの会の主役だからと、一番目立つ席に座っていて、その隣には大崎くんが座っていた。
いくらクジとは言え、もうちょっと気を使って欲しかった……とひやひやしながら眺めていたけれど、花岡さんは怒ってる様子もなくて少し安心する。

いつかみたいに大崎くんに突っかかってこられたら可哀想だなと思ったのは気苦労に終わったみたいだ。
さすがにこんな席でそんな事は言い出さないかと考え直し、胸を撫で下ろした。

私の隣は、右が営業の人で、左は手塚先輩。
あまり女性職員が並んで座るなんて事はないから珍しい。

「では、これから花岡さんの送迎会を行いたいと思いますー。まずは支店長の挨拶からー」

営業のひとりがその場で立ち上がり、場をしきる。

支店長が、花岡さんとの事を交えた思い出話をした後、花岡さんに花束と色紙、ちょっとしたプレゼントが贈られ、乾杯の合図と共に会が始まった。


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