囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~


未だに……?という感じが否めないけれど、旅館での歓送迎会の時に限り、なぜか注文するのは瓶ビール。
そして、それを若めの職員が注いで回るという儀式がある。

新入職員はもちろん、入社して三年目五年目あたりの職員までは、乾杯のあいさつと同時に瓶ビール片手に各々回りだすから、私もグラスが空いてる人から注いで回る。

注ぐだけじゃなく、そこで少し会話してから次に行く……というような感じだから、親睦を深めるためにできたルールなのかもしれない。
……まぁでも、そういった意味合いがあるとしても、毎回面倒だなとは思っているのは、私だけじゃないはずだ。

支店長や次長、営業預金融資のそれぞれの代理にビールを継いだ後、適当に営業担当のところを回って席に戻ってくると、手塚先輩はお膳の半分の料理を食べ終えていた。

「ご苦労様」
「やっとご飯食べられます……」
「もう少し経てばゆっくり食べられるようになるわよ。はい」
「あ、すみません。いただきます」

ビール瓶を差し出す手塚先輩に、ペコッと頭を下げながらグラスを持つと、そこにトクトクと金色の液体が注がれていく。
あまりビールは得意じゃないし、このあと温泉も入るから、いつも一杯二杯しか飲まない。
こういう場で飲むビールは特別なのか、割と酔いが回るから。本当に注意が必要だ。

大崎くんは大丈夫かな、と見ると、ちょうど及川にビールを注いでいるところで……なんか及川が変な事言わないといいなと思いながら眺める。

「そういえば、大崎くんの運転はどうでした?」
「それが、ちょっとイライラするくらいに慎重だったわー。あの子やっぱり根が真面目なのよね」
「ですね。今日もしっかり見ておかないと、営業に言われるままに飲んじゃいそうで心配です」

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