囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
旅館を出て少し歩いたところにある階段通り。
温泉街の真ん中を突き抜けるように、何百段と続く階段の途中途中には、休憩できるようにと椅子が設けられている。
そのうちのひとつに座った及川が「そういえば昨日」と話を切り出した。
「二次会終わって部屋戻ってから、深月が大崎に抱き締められてたって話題になってた」
まだ時計は八時過ぎを指していて、朝早い時間だけど、ぽつりぽつりと歩いている人が見える。
一応、昔からある階段と、その先にある、老舗のお饅頭屋さんが有名らしいから、それでかもしれない。
お饅頭屋さんも、ホテルをチェックアウトした人がそのまま立ち寄って買えるようにっていう心遣いで八時から開いているって、前聞いたことがあるから。
「えっ」と声をもらして驚くと、及川は普通の顔をして続けた。
「大崎は、ふらついたところを支えてもらっただけだって笑ってたけど……実際は、抱き締められてたんだろ?」
そう聞いてきた及川がこちらを向く。
その表情は穏やかな笑みを浮かべていたから、じっと見つめてから頷いた。
「……うん。及川なんて女泣かせのひどいヤツだし、そういう部分を知らないから好きだなんて言ってられるんだって、言われて」
「ひどい言われようだな。その通りだけど」
「そういうの全部知ってて、それでも好きなんだって言ったら、抱き締められてその後ただの後輩に戻ってた」
ははって笑ってた横顔に言うと、及川は少し黙った後「ふーん」とだけ答える。