囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
「大崎は相変わらずだな」
くっくって楽しそうに笑う及川に、「お疲れ様」と声をかけてからため息をつく。
「他人事だと思ってるでしょ。本当大変なんだから」
「頑なっぽいもんなー。その上、野球部だったっていうし、元からの性格も相まってすごい事になってるな」
「いい子なんだけどね。仕事も熱心だし……ただ頭はちょっと弱いけど」
「俺、このドアの暗証番号、五、六回聞かれた」
「そんな事聞かされたって驚かないからね。
あの子、顧客名入力しようとするたびに、『このキーボード〝め〟がないんですけど』って騒ぐんだから。毎回必ず」
「まぁ、ローマ字入力に慣れてる分、使いにくいのは分かるけど」と続けながら、もうひとつため息を落とした。
私だって初めの一年はかな入力のキーボードにはかなりてこづった。
けど、五十音の中でない文字なんかないと思ったから自分で探したし、あんな風に毎回〝め〟ばかり見失いもしなかったのに。
一番最初に言われた時には、わけがわからなくて〝めって目……? え、目?〟って頭の中ハテナマークだらけになったのは秘密だ。
まったく……と思いながら腕を組んでいると、やけに静かな及川に気付く。
どうかしたのかと思って見上げると、じっと私を見ている及川とばちっと目が合った。
真剣な目にドキッとしているうちに、及川はそれをいつも通りの色に変えて言う。
「なーんか、〝あの子〟なんて呼んでると、大崎が深月のモンみたいに聞こえる」
「別にそんなつもりないけど……でも、そっか。いくら年下でも〝あの子〟は大崎くんに失礼か」
「大崎くんだってちゃんとした大人で社会人だもんね」と笑って見上げると、及川は「んー、そういうわけでもないんだけど」と微妙な顔して笑っていたけど。
それよりも仕事に戻った大崎くんが気になっていたから、店舗エリアを指さしながら聞く。