囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
「それより私、もう戻って大崎くんの仕事見ないとだけど、及川は? コーヒーでも飲んでから来るの?」
「あー、俺も戻る。コーヒーは、きっとあとで深月が入れてくれるだろうし」
「私大崎くんの面倒で手いっぱいなので」
笑顔で断ると、及川は「そんなこと言いながら入れてくれるくせにー」と余裕そうに笑う。
「あー、その笑顔腹立つ」
「あれ? 営業先には好評なんだけど」
「ミルク五個にシュガー五本だっけ」
「うわー。それ毎日飲んだら俺多分来年、健康診断引っかかる」
「心配なら自分で入れたら」
冷たく言って店舗エリアに繋がるドアを開けると、及川が後ろから言う。
「そんな冷たい事言わないで、深月ちゃん入れてよ」
「あれ。健康診断引っかかってもいいの?」
「信頼してますから」
そう言いながら追い越していった背中をじっと見つめてから目を逸らした。
大崎くんとも、別の誰とも違う、広くて……独り占めしたくなる背中は、もう二度と私のものになる瞬間はこないと思うと、またじくりと痛みが浸食した気がした。
「……ミルク一個にシュガーなし」
すっかり覚えてしまった及川の好みが悔しくて嬉しくて。
……苦かった。