囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
「高岡飯店で、最初の支店長の挨拶終わったら詳しく聞くからね。元彼との話」
「……話すような事なんてありませんって。普通の地味な付き合いでしたし。
私、先輩みたいになかなか彼氏が別れてくれなくて、あげくお店の前で待ち伏せされて修羅場になったとか、そういう鉄板ネタみたいなの持ってませんし」
「私だってそんなの一度っきりよ」
「今付き合ってる人は穏やかだって言ってましたもんね。どうですか? 最近は。ちなみに来月確か連続休暇とってましたけど一緒にどこかに出掛けたりする……」
「深月、そうやって話逸らそうとしても無駄だからね。高岡飯店で焼き肉そっちのけで隣に座って全部吐かせるからね」
くるっと前を向いた手塚先輩の背中に「横暴……」とボソッとこぼすと「年功序列はまだまだ健在ですから。残念ねぇ」と笑われてため息を落とした。
手塚先輩は悪い先輩じゃない。
私のコーチャーをしてくれた、仕事のできるてきぱきとしたいい先輩だ。
……ただ、やたら構ってくるっていうのがたまに面倒くさいだけで。
きっと今日の決起集会では、聡史の事を散々聞いた後、大崎くんの恋愛にまで首を突っ込んでぐいぐい聞き出すんだろうなぁと想像ができる。
私も他人の恋愛模様を聞くのは嫌いじゃないけど……あそこまで行くとパパラッチもいいところだ。
及川の事だけは絶対にバレないように気を付けないと。
そんな事を考えながら、途中だった伝票精査に戻ろうとして……隣からの視線に気付いて顔を上げた。
こっちを見ている大崎くんに、そういえばと、聡史と話している間から見てたんだっけと思い出す。
何か分からない部分があったなら放っておいちゃって悪かったなって。