その唇に魔法をかけて、
 ――あなた、この仕事向いてない。

 陽子の刃のような言葉がガンガンと頭に鳴り響いている。美貴は涙を堪えて恐怖を感じる余裕もなく、真っ暗な夜道を猛ダッシュで駆け抜けて寮へ帰ってきた。

「っ……うぅ」

 バタンっと勢いよくドアを締めると、美貴はドアにもたれかかって堰を切ったように泣きだした。切れ切れの嗚咽も抑えることなく、ズルズルと腰を落として床にしゃがみこむ。

(もう嫌……限界!)

(こんな仕事、陽子さんがいうように私にはきっと向いてない)

(みんなに迷惑が掛かるなら、いっそ――)

 膝に突っ伏そうとした時、バッグの中のスマホが鳴った。誰とも話したくないという時に限って電話は鳴るものだ。スマホを取り出してみると、それは学生時代の時の友人で、卒業旅行にも一緒に行った山内有紗からだった。
< 93 / 314 >

この作品をシェア

pagetop