恋した責任、取ってください。
 
何が起きたのかと思い、一瞬思考が追い付かなくてカエルが潰れたような声が出てしまったけれど、よくよく見たら佐藤さんではないか。

うわ~、すごい久しぶり。

こうやって話すの、何ヶ月ぶりだろう。

て。


「佐藤さん!? 何やってるんですか!?」


完全に押し戻され、もはや開ききってしまった可哀相なドアを、それでも一応≪開≫のボタンを押して佐藤さんが乗り込んでくるのを助けながら、つい声が大きくなってしまう。

何ヶ月ぶりだろうとか悠長に考えている場合じゃないぞ私、下手したら首とか体が挟まって、えらいことになってしまうところだった。

佐藤さんって意外にチャレンジャー……。


「あの、弥生さんのことで時間作ってもらえないかと思って。……いや、ここんところ夏月さんと全然話せてなかったから、会いたくて」

「ああ……」


佐藤さんがしっかりと乗り込んだのを確認し、《閉》と目的の階のボタンを押しながら、そういえば弥生と佐藤さんにも色々あったっけなぁと、まるで昔話のように思い出す。

弥生は佐藤さんが好きで、でも佐藤さんはほかの人のことが好きで、それでも諦めきれない弥生は、フラれてもなお友達から始めてもらい、今ももんちゃんの散歩を続けている。

きっと佐藤さんは、私たちが姉妹だからそのことをずっと気にかけてくれているのだろう。

真面目一辺倒な佐藤さんのことだ、もしかしたら、妹さんの気持ちに応えられなくてすみませんなんて律儀に思っているのかもしれない。

と。


「夏月さん、今夜、時間あります? たまには一緒にモンの散歩でもどうかなと思ったんですけど、イベントの準備で忙しいですか?」


妹をふったからって逆恨みなんてしませんよと思っていると、佐藤さんがふいに訊ねてきた。


「あ、いえ! 散歩の時間までには帰れると思います。児童公園のところで大丈夫ですか?」

「はい!」
 
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