恋した責任、取ってください。
すぐに気を取り直して了承の旨を伝えれば、不安そうだった佐藤さんの表情が一気にぱあぁっと明るくなり、歯切れ良く返事を返される。
何もそんな、不安だったり明るくなったり、私の一挙一動を気にする素振りを見せなくても、無下に断ったりしませんって。
弥生の恋は弥生のもの。
佐藤さんには一つも謝るところなんてないし、むしろ私のほうが、断られているのに妹がしつこくてすみませんと頭を下げたいくらいだ。
「それにしても、まともに話すのって、一体どれくらいぶりですかね。御用聞きが終わって、夏月さんが恵麻さんの下についてからはモンの散歩でも会えなくなるし、この前の植樹イベのときも、結局何も話せなかったから。元気そうに仕事してるのは見てて分かってたんですけど……なんか、改まると照れくさいですね」
「はは、ですね。何を話したらいいのか、ちょっと分かんなくなっちゃいますね」
会話の流れは世間話に移ろいでいくものの、上っていくエレベーターの中で佐藤さんと2人きりという状況が、少しだけ私の緊張感を煽る。
何に対してという確かなものはないけれど、強いて挙げるならば、図らずも妹の想い人と密閉された空間にいるという罪悪感にも似た感情から、そうなっているのかもしれない。
同じ会社の中にいたら、そりゃ会う機会だってあるだろうし、一緒にエレベーターに乗り込むことだって往々にしてあろう。
ただ、私と違ってもんちゃんの散歩の時くらいしか佐藤さんに会えない弥生に申し訳なくて、どうしようもないことだけど、胸が痛む。
「--って、聞いてますか、夏月さん」
「はい!?」
「ちょっと目元が赤いようですけど、どうしたんですか?って。そう聞いてたんですけど」
呼びかけられ慌てて返事をしたものの、どうやら私は、佐藤さんそっちのけでいつの間にか自分の世界にトリップしていたらしい。
彼に困ったような笑顔を向けられてバツが悪くなり、メガネを無意味に触ってしまう。