恋した責任、取ってください。
「あの、目立ちますか?」
「……いえ、そういうんじゃないですけど、話聞くことくらいはできるんで、あんまり溜め込まないで、こまめに吐き出してください」
「すみません、ありがとうございます」
ヘラッと笑顔を作って頭を下げると、これ以上佐藤さんにひどい顔を見られないよう、彼に背を向け、階数ボタンと至近距離で向き合う。
なるべく目立たないように直したつもりだったけど、私のメイク技術では、どうやら見る人が見れば分かるものだったらしい。
お見苦しくて申し訳ない!
夜までにはしっかり直しておきますから……。
それきり佐藤さんとの会話は途切れ、エレベーターは止まることなく順調に階数を重ねた。
目的の階--チーム・ブルスタのフロアが入っている15階の統括マネージメント部に到着すると、ポーンというアナウンス音の後、ゆっくりとドアが開いていき、私は一歩、足を出した。
と、そこで気づく大惨事。
「だーっ、すみません佐藤さんっ、普通に私の行きたい階のボタン押しちゃってました……!」
「ぶはっ!今さらっ!」
すると、こっちは申し訳ない気持ちでいっぱいだっていうのに、佐藤さんは盛大に吹き出す。
壁に手をついて必死に笑い声を押し殺そうとしている佐藤さんを見ていると、恥ずかしすぎて穴を掘って永遠に埋まりたい気分になる。
ああ、どうして私はこうなんだ……。
しかし、立候補を取った用紙を入れたクリアファイルで顔を隠す私に、佐藤さんは言う。
「いいですよ、別に。夏月さんのボケっぷりには耐性ありますし、勝手に乗ったのは俺だし、また下りていったらいいだけなんで。そんなことより、今日の約束を忘れられたら困っちゃうんで、それだけしっかりして下さいね」
「はい……」
そして、消え入るような声の私の返事を聞いた佐藤さんは、ドアが閉まりきる直前に我慢しきれなくなったようで、ぶはっ!と吹き出す声とともに、エレベーターの奥に消えていった。