恋した責任、取ってください。
「あれ、今日は私服なんですね。てっきりランニング仕様の格好だと思ってました」
「……あ、いや、ちょっと気合を入れたくて」
「へぇ」
何に気合を入れたいのかは分からないけど、立ち話もなんなのでベンチに移動し、外灯でぼんやり照らされているそこに並んで腰掛ける。
佐藤さんのことが大好きなもんちゃんは、もちろんすぐに彼の膝の上に陣取り、オシャレなチノパンの上でさも当然のように丸くなった。
こら、ともんちゃんのリードを引くも、佐藤さんに「いつものことですから」と笑って言われてしまえば、いつものことなら仕方がないと思わざるを得ないのかもしれない。
本当に佐藤さんが好きなんだから、ウチの愛犬は……と、相変わらずの様子に苦笑いだ。
でも、そこでふと思うのは、私が一緒に散歩していなかった間ももんちゃんはこんなふうに佐藤さんにベッタリだったんだなということで。
さぞかし弥生はヤキモチを焼いたことだろうと想像すると、それはそれで切ない。
それからお互い、少しの沈黙。
本格的な夏が始まりつつある最近は、梅雨の終わりと相まって夜でも気温、湿度が高く、じっとしていても体にじんわりと汗をかく。
今夜は風がないようで、とても蒸し暑い。
と。
「あの、弥生さんのことで話っていうのは」
「あ、はい、なんなりと……!」
夏の虫の鳴き声がどこからともなく聞こえてくる中、意を決したようにすっと息を吸い込んだ佐藤さんが、ゆっくりと口を開いた。
声色から緊張している様子が窺えて、こちらも俄かに緊張してくるけど、そもそも佐藤さんが私に義理立てする必要なんてないんだよなぁ、と思うと、どういう相槌を打ったら正解なんだろう?とそっちにばかり気が向いてしまって、違う意味で緊張が高まってしまう。
急き込んで、なんなりと……!と口走ってしまったものの、内心は心臓バックバクだ。
けれど。