恋した責任、取ってください。
 
「あれ、嘘です。すみません」


と、佐藤さんは言う。

真面目一辺倒な佐藤さんにも嘘をつくことがあるんだという驚きで目を丸くする私をチラリと横目で見やると、彼は続けてこうも言う。


「そろそろ我慢できなくなったんで、弥生さんの名前を借りてしまいました。ズルいやり方ですけど、牽制したかったんです、色々と」

「牽制……?」

「ええ、特に大地さんに」

「だだだ大地さん!? なななんでです!?」


ああもう、ちょこっと大地さんの名前が出ただけでうっかり取り乱してしまうなんて、どれだけ私は大地さんを意識しているのだろうか。

佐藤さんのことだ、こんなにあからさまな反応をしてしまっては涙の跡は大地さんと何かあったのだと早々に勘付かれてしまう!

恥ずかしい!恥ずかしすぎて、とてもじゃないけど佐藤さんのほうを向けない!

というか向きたくない!


すると、下を向き、自分のズボンをキュッと握りながら困った、困ったなぁ……と逃げ場のない羞恥に耐えている私をよそに、隣の佐藤さんからフッと軽く笑った気配がした。

それからポツリ、言う。


「つき合ってください」

「へっ!?」


あまりに突拍子もない誘い文句に、羞恥心を忘れて思わず佐藤さんの顔を凝視してしまう。

“つき合ってください”……えーっと、どこに?

いやその前に、牽制とか大地さんとか、色々回収しきれていないことがあるんですけど……。

けれど、とりあえず何か言わなきゃいけないことだけは、佐藤さんから感じるいつになく張りつめた空気感からありありと伝わってきて、少し間を置いてから、私はおずおずと口にした。


「あの、どこに……ですか?」

「……っ!?」


しかし、佐藤さんは目を見開き絶句する。

あれ、つき合う=どこかに出かけるって意味じゃなかったですか!? もしかして私、つき合うの意味を履き違えていたりするんですか!?
 
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