恋した責任、取ってください。
エマさん--御手洗恵麻さんは、少しもピンと来ていない私にニコニコと笑いながらそう言ってくれたけれど、岬さんがいるから大丈夫というわけでもないような気がするのですが。
何でも屋や御用聞きって、オブラートに包んでいるけど、要はパシリなんじゃ……。
それに、変なワガママって何ですか?
外国人の選手もいるっていうし、母国語なのに日本語が残念な私がどうして英語も話せよう、世界の共通語だけど無理なんですけど。
「が、頑張ろう……」
それでも、仕事は仕事。やるしかない。
泣き言は声に出さずにぐっと堪え、ささっと胃薬を流し込んで、本社ビルの地下にあるというブルスタの練習コートへと向かう。
都会の真ん中に自社ビルを建てるほど大きい会社であるマザー・ファクトリー。
社名を直訳すると母なる工場、すなわちいくつかの工場の中で中心的役割を果たす工場という意味だけど、母=新しい命を生む母体から、新しいものを創造し発信するという意味合いで付けられたのが、この社名だという。
会社が所有しているバスケットチーム『BLUE STAR』についても、青白い光を放つ一等星にあやかり、会社もチームも一等星のように輝けという願いが込められているのだそうだ。
私の夏月という名前も、私が産まれたときは夏で、そのとき月があんまり綺麗だったことから付けたと両親から聞いているので、何かと星に縁があり、考え方によっては、ブルスタに配属になったのも、選手の御用聞きをすることになったのも、星の巡り合わせ、何かのご縁。
必然的だったとも言えなくもない。
「ああ、胃が……」
けれど、胃とは全く関係ない話。
いくら岬さんがいるとはいえ、みんな男の人だし体も大きいだろうし、それだけで私の胃はシクシクと痛んできてどうしようもない。
新しい環境は、これだから好きじゃない。