恋した責任、取ってください。
恋からくる胸の痛みと胃の痛みは、全く別物。
バスケの教本と選手のプロフィールをプリントアウトした紙を入れたファイルを胸に抱く手に尋常じゃない量の汗をかきながら、エレベーターで地下まで下り、体育館へトボトボ。
選手のワガママに笑顔で応えるのが御用聞き。
もしもパスの練習につき合わされることになれば、確実に顔面で受けて鼻血モノだよ……。
想像しただけで死にたいくらい恥ずかしい。
それにしても。
「……、……」
岬さん、引退するつもりなんだろうか。
今朝も恵麻さんとそんなような話をしていたし、彼女が『色々ゴタゴタしてて』と言ったときも岬さんに意味ありげな視線を向けていた。
どこか体の故障でも……?
私の王子様、いなくなっちゃうのかな。
「身長193cm、ポジション・センター。誕生日は12月22日、27歳、O型、好きなものは小さいものとメガネ……あ、ほんとに好きなんだ」
岬さんのプロフィールを取り出し、眺めてみる。
恵麻さんによれば岬さんがいないとリバウンドがガタガタだというし、あの人柄だ、きっと彼はプレイヤーとしてだけではなく精神的な面でもチームになくてはならない存在なのだろう。
うーん、なんとか彼をチームに引き止めることはできないだろうか……。
ほかの選手も恵麻さんも、もちろん私も、岬さんがいてくれないと寂しい。
「お、なっちゃん」
「岬さん……」
すると、噂をすればなんとやら。
練習着だろう、Tシャツにハーフパンツという格好の岬さんと体育館の出入り口で出くわした私は、彼を見上げながら、思わずプロフィール用紙を持つ手に力を込めてしまった。
恵麻さんはあれから岬さんについてのことは何も言わなかったから、引退の話は、岬さんから直接聞かないことには真相は分からない。
でも……。