恋した責任、取ってください。
 
そこで一旦言葉を区切ると、佐藤さんは、キューピットだと思ってたんだけどなぁ……と膝の上のもんちゃんの頭から背中にかけての部分を撫でながら、おどけたような口調で言う。

チクリ、胸に棘が刺さる。

何も分からないもんちゃんだけが、幸せそうに佐藤さんに鼻先を寄せてクンクン甘えた。


「罪悪感が恋愛感情に変わることもあるんですか? ていうか、震えてまで同じコースで散歩するって、すごい私、感じ悪くないです? なんだか当てつけみたいで、今さらですけどそんな自分に激しくドン引きです……」


言いながら、よくこんなのに恋愛感情を持ってもらえたものだとつくづく思う。

思えば佐藤さんは、3ヵ月前まではミスター・ランニングマンで私の中で怖さの対象で、それ以上でもそれ以下でもない人だった。

さすがに2年も同じコースで散歩を続けていれば手は震えなくなっていたけど、それでも、捉え方次第では当てつけだと思われても仕方がないことをしていたっていうのに。

……恋愛感情というのは、いつどこで、何がキッカケで芽生えるか、本当に分からない。


「いやいや、感じは最初から良かったですよ。こういう言うとなんか変ですけど、俺のことを意識して気をつけてるんだって思ったら可愛く見えるようになっちゃったんです。あの頃、名前も知らなかった夏月さんに会うために、散歩の時間に合わせて走ってたくらい」

「そ、そこまで……」

「いや、あの、すみません、ストーカーっぽくて。でも、ふわっとした見た目とのギャップに惚れたっていうか、前向きに一つ一つ解決しようとする姿勢が、芯が一本通っていてむしろ好印象だったんです。ブルスタでの仕事を見ていてもそうですよ、だからますます好きになる」

「佐藤さん……」


へへっと照れくさそうに笑う佐藤さんの顔を見ていると、胸が押しつぶされそうに痛い。

全部分かった上でのことだから、なおさらだ。
 
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