恋した責任、取ってください。
 
でも、だからこそなんだと思う。

こんなときにすごく不謹慎だけど、今、どうしようもなく大地さんの顔が浮かんでいる。

……それが私の答えだ。


「でも私、佐藤さんの気持ちには--」

「待って。それ以上は今はナシです。それでも言おうっていうなら、無理やりキスします」

「え!?」


けれど、並々ならぬ覚悟をもって口を開いたのも束の間、最後まで言わせてもらえず、おまけにちょっぴり脅されてしまった。

佐藤さんの表情を見ると本気ではなさそうに感じるけど、さっき“つき合いたい”の意味を分かってもらうためにキスの真似事をした人だ、ここは素直に従っておくのが得策かもしれない。

むぅ、と思っていると、佐藤さんが言う。


「灯台下暗し、って知ってますよね。俺はそんなポジションでいいんです」

「へ?」

「夏月さんがどうしようもなくなって下を向いたときに見つけてもらえるような、そんな感じです。身近なことほど案外気がつかないものじゃないですか、例えば、自分の気持ちとか」

「はあ……」

「俺、気が長いんです。家康スタイルですね」


うーん、なんだか、私がいつの間にか佐藤さんを好きになっている可能性もある、と言われているような気がするのだけど、どうだろう。


「あの、でも、それじゃあ佐藤さんばっかり損な役回りじゃないですか。大地さんがダメなら佐藤さんって、やっぱりいけません。佐藤さんはそれでいいんですか? もしかしたら私、ズルいことしちゃうかもしれませんよ?」


本当にどうしようもなくなったら佐藤さんの気持ちに甘えてしまうこともあるかもしれない、ちゃんと好きじゃなくても好きだと言ってくれる佐藤さんを選ぶこともあるかもしれない。

今はそうじゃなくても、この先のことはどうなるかなんて誰にも分からないんだから。

それでも佐藤さんはいいのだろうか……。
 
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