恋した責任、取ってください。
「夏月さんがそういう人じゃないから言ってるんです。打算的なことなんて絶対にできっこないくせに、何を悪い子ぶってるんですか?」
けれど、見透かしたように佐藤さんが言う。
ギクリとして思わず目を逸らしてしまうと、さらに彼のフローズンアイは冴え渡る。
「気は長いですけど、そこまで俺の懐は深くないですよ。好きになってもらえるように努力はします。でも、ちゃんと好きじゃない人とキスなんてできませんよね、夏月さんは」
「う……そこまで分かっておられて……」
「当然ですよ」
佐藤さんはフンと得意げに鼻を鳴らすけど、いやもう、その通りで何も言葉が出ない。
ちゃんと好きじゃないと、きっとできない。
そこまで分かっていて“灯台下暗し的なポジションでいい”なんて言う佐藤さんは、結局のところ、私の恋を応援してくれているんだと思う。
……そういう意味での懐は、誰よりも深い。
「さて。長居しすぎましたね。そろそろ帰らないと弥生さんが心配するんじゃないですか?」
「そうですね、帰りましょうか」
「送ります」
「ありがとうございます」
それから少し、2人で黙り込んでしまったけれど、もんちゃんが佐藤さんの膝の上から降りたのをきっかけに、また会話が再開された。
ベンチから腰を上げて公園を出て、先陣を切って歩くもんちゃんのお尻を眺めながら、私たちは少し間を開けて並んで少し後をついていく。
マンションの前に着くとリードを手渡された。
そのとき少しだけ触れた佐藤さんの指先は汗ばんでいるのにひんやりとしていて、ああ、ずっと緊張していたんだな……と、今さらながら彼の私への気持ちの大きさを感じることとなる。
「じゃあ……おやすみなさい」
「……おやすみなさい」
もんちゃんを抱きかかえ、自動ドアをくぐる。
いつもなら走って帰る佐藤さんは、今日は私がエレベーターに乗り込み、ドアが閉まるまで、ずっとその場に立って見送ってくれていた。