恋した責任、取ってください。
 
バスケットのことなんて何も知らない私がチームに留まって下さいと頼んだところで、岬さんの気持ちが変わるとは思えない。

それに、もしも私の一言がきっかけで機嫌を悪くし、新しいセンターが見つかる前にチームを辞めるなんてことになれば、御用聞きや何でも屋じゃなくて、私はただの疫病神だ。

あんなに引き止めていた恵麻さんに合わせる顔がなくなるし、岬さんを必要としているチームにも迷惑をかけることになり兼ねない。

まずい。それだけは阻止しなくては。


そうして無理やり引退の件を自己完結させる。

新しいセンターが永遠に見つからないことを星に祈るくらいしか、今の私にはできない。


「あ。その岬さんって呼び方、良くないね」

「へ?」


すると岬さんは、腰に手を当てるとあからさまに大きな溜め息をつき、私を見下ろした。

なかなか間抜けな声で聞き返してしまった私に対して岬さんはふっと表情を和らげると、仕方ないなと言うように片眉をピクリと上げる。


「俺、堅苦しいの嫌いなの。その手に持ってるの、俺らのプロフィールでしょ? せっかくの機会なんだから、大地って呼んでくんない?」

「そそそそんなっ!?」


せっかくの機会って、どういう機会ですか。

生まれてこの方、殿方を呼び捨てで呼んだことなんて一度もないんですけれども!

あまりに恐れ多くて、両サイドの髪の毛が顔にパシパシ当たるほどにブンブンと首を振る。


「ほら、大地。リピート・アフタ・ミー」

「むむむ無理でし!大地さんならまだしも、いきなり呼び捨てなんてハードル上げないで下さい。私の胃を痛めつけるつもりでしか!」


けれど岬さんはどこ吹く風といった様子で大地と呼べと強要してきて、私はついに胃の痛みが限界を超え、残念な日本語を撒き散らす。

ああ、この人、無自覚タラシだよ……。
 
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