恋した責任、取ってください。
 
文化祭とか修学旅行とか、何か大きなイベントが差し迫っていた頃だったんじゃないかと思う。

彼の名前や顔や、そのとき私は何をしていたのかも、もうほとんど思い出せないけど、ある日それはもう唐突に『つき合ってほしい』と言われて、私は当然のように『どこに?』と聞いたら、びっくりするくらいドギマギされて。

『……あー、じゃあ自販機?』と特別行きたいわけでもなさそうだったのに一緒に行くことになって、でもその間中、彼は不思議なくらい緊張していたし、あからさまにしょんぼりしていて--って、あれが人生初告白だったのね!?

そうそう、大学のときも、バイトに急いでいるときに同じようなことを言われて、だけど『今日バイトだからごめんね』と断った人が2人ほどいて--って、あれも告白だったのね!?


お盆休みやお正月。

まとまった休みで実家に帰ったときに、大学での出来事を訊ねてきた弥生にそれを言ったら、すごく憐れんだ目で見られた覚えが……。

そうか、あの目はこういう意味だったのか。

あれ? 私、なんかモテて……たね?


「あわわ、弥生、私って実はとんでもなく失礼な女なんじゃ……。どうして気付けなかったんだろう。ていうか、どうしてちゃんとラブの意味での“つき合いたい”だって教えてくれなかったんだろう。私、絶対に真面目に考えたのに」

「いやいや、失礼は失礼だけど、やっぱり相手にそこまでの気持ちがなかったからなんじゃないかって、あたしは思うよ? 告白されて好きになることもあるけど、お姉ちゃんの場合はそれ以前の問題だもん。基本面倒くさいし」

「なっ!」


彼らに対する底なしの申し訳なさと自分のアホっぷりにガックリと肩を落としてうなだれる私に、しかし弥生は妹ならではの容赦ない物言いをしつつ、グラスに新しいビールを注ぐ。

面倒くさいって……。

まあ、納得しちゃうところがツラいな。
 
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