恋した責任、取ってください。
 
だからそういう、私だけに特別、みたいな言い方も、頭ポンポンも、気持ちがグラグラしちゃうからできるだけ避けてほしいんですけど……。

どんなに必死に気持ちを封じ込めたところで、意志の弱い私は、きっとほんの些細なことにさえもすぐにその想いを溢れさせてしまう。

だったら今まで通り距離があるほうがいい。

大地さんの言動や行動の一つ一つには特別な意味なんてないんだと、いちいちときめかなくなれるように、私に少し修行の時間をください。


「あっ、なっちゃんだ!」

「こらユウト、走っちゃ危ないっ」


そうこうしていると、通りの向こうから一組みの親子が小走りでこちらに駆け寄ってきた。

私を指差しながら弾けんばかりの笑顔で走ってくるのは、春沢悠斗くん--植樹イベントのときに仲良くなった、あの小学2年の男の子だ。

その後ろを追いかけるのは、彼のお母さん。

今日のバスケ教室には実は春沢さん親子も参加することになっていて、だから尚更、ヘマはできないと気合いが入っていたりもする。


「悠斗くん、久しぶり〜!元気だった? ちょっと見ない間にすっかり日に焼けたね~!」

「プールいっぱい入ったの!」

「そっかぁ、楽しいね〜」


私のお腹の辺りにドスンと体当たりしてきた、小さいながらも逞しい体を抱きとめ、久しぶりの再会に2人して胸を躍らせる。

ああ、悠斗くん、めっちゃ天使……。

こんなウズラな私にも前と変わらず懐いてくれるなんて、なんていい子なんだろう。


「……悠斗がっ、すみませんっ」

「いえ、お待ちしておりました!」


少し遅れて到着したお母さんは、お弁当や飲み物、着替え、タオルなどが入った大きめのトートバッグを肩に掛け直しながらハァハァと息を弾ませていて、悠斗くんに「お母さん、運動不足すぎなんだよ」とツッコまれる。

当然彼は頭に「ばかっ」とお母さんの愛あるゲンコツを食らうわけだけど、そこで場の空気が一気に和み、私たちの間に笑い声が広がった。
 
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