恋した責任、取ってください。
 
そのあと、今しかないと思って告白して、玉砕して。

帰ったら、ちょうど同じタイミングで佐藤さんに失恋した弥生がいて、もんちゃんに慰めてもらいながら、ふたりで飲んで泣いた。

まだたった4か月前の出来事なのに、それ以上前のことのようにも思えて懐かしいような気持ちになる。

あのときは自分の気持ちを伝えることだけで精いっぱいで、先のことなんて少しも考えていなかったけれど、今はこうして大地さんと向かい合っているんだから、不思議なものだ。


ふと目を上げると、私の視線に気づいたらしい大地さんもメニュー表越しにちらりとこちらに視線をよこし、ふっと微笑をもらしながら「なっちゃんとふたりでご飯する自分なんて、ちょっと前までは想像すらしてなかったなぁ」と。

私と同じように、どこか不思議そうな顔をして目を細めた。


「何食べたいか決まった?」

「あ、はい、きのこづくしの炊き込みご飯セットを」

「オッケー。すみません、注文いいですか?」


前半部分は私に、後半部分は店員さんに聞こえるよう声を張り、すぐにやってきた先ほどの店員さんにメニュー表を指さしながら大地さんがひとつひとつ注文していく。

大地さんは、焼き鳥のセットやイカの酢味噌和えといったお酒に合うメニューを注文していて、追加でもう2本、熱燗を頼んでいる。


「俺、飲むときはご飯食べないんだよね。我ながら不摂生だなって思うけど、どうにもやめられなくて。恵麻にも体を作るものを食べろって言われてるんだけど、試合のあとは食べるより飲みたくなっちゃうんだよね」


たはは、と決まり悪そうに笑う大地さんは、1本目の熱燗の残りをお猪口に注いで、それを指先でくるくると弄ぶ。

飲みたくなっちゃうというよりは、今日は飲まなきゃやっていられない、と言っているように聞こえるのは、きっと私の思い違いなんかじゃないだろう。
 

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