恋した責任、取ってください。
大地さんが二度言った〝初恋〟を、口の中で嚙みしめるように私も繰り返す。
当たり前だけど、大地さんにだって初恋の人はいるわけで。
私の初恋が極端に遅すぎただけで、私が知らない間の大地さんにはきっと初恋の人以外にも好きになった人がいるはずだ。
私に気を使ってか、そのことには触れないけれど、でも、きっと。
頭ではわかっていても、それでも当たり前に痛む胸をなんとかなだめて唇を引き結ぶ。
消そうとしても無意識に浮かんでくるのは、大地さんの初恋がまだだったらよかったのに――なんていう、あまりにとんちんかんな気持ちだ。
それを振り払うように力を込めて手のひらを丸めると、そんな些細な変化にも気づいたらしい大地さんが、
「あくまで俺の場合はだけど、変に美化されちゃっててね。タチの悪いことに、何気ない瞬間にふっと思い出しちゃったりするんだよ。だから、そういうの、もうやめたかったんだ。……いろいろ失礼だし」
ごめんね、と言いたげな表情でそう言って、「思い出になりきれないものって、見方によっちゃ失恋より最悪だよ」と笑い飛ばした。
それからふと遠くを見るような目をして視線を宙にさまよわせ、かと思うと、隠そうともせずに苦悶の表情を浮かべて言う。
「そういうわけで、葛城が持ち掛けてきた勝負に乗って、何も知らない彼女に試合を観に来てもらって。――でもその試合が、葛城を失望させて、殺しかけることになった」
「ど、どういうことですか……?」
「単純な話だよ。彼女を賭けた真剣勝負に水を差したんだ。勝負はお互いに24点ずつ得点してて、最終第4クォーターの試合終了間際、残り10秒。ものすごい気迫でドリブルで突っ込んでくる葛城に……わざと抜かせたんだ」
「……、……」
「……忘れられないよ、ひどく軽蔑した目で俺の形ばかりのディフェンスを抜いていった葛城の顔とか。得点を決めたあとの、俺を見る葛城の泣きそうで、でも心の底から怒ってる顔とか。……一瞬のことだったのに、今でも目に焼き付いて離れない」