恋した責任、取ってください。
 
「……大地さん……」


頭を抱え込むようにしてうつむき、今にも泣きそうな声で「最低だよね、俺」と言う大地さんに、かける言葉が見つからなかった。

葛城さんからすれば、プライドを傷つけられた、裏切られたという以外に言葉はないだろう。

だって10年来の親友からそんなことをされたら、その怒りの矛先も、軽蔑も失望も侮辱も、大地さんに向けるほか、ぶつける先がない。

信じていた相手だったからこそ、いつだってフェアな立場で隣で競い合ってきた相手だったからこそ、自分に得点させるためにわざと抜かせた大地さんのことを許せるはずがなかったんだろう。


「案の定、試合後にしこたま殴られたよね。なんであんなことしたんだ、俺をバカにしてんのか。高校時代、大地の控えだった俺に情けをかけたつもりか、ざけんじゃねーって。……殴られながら、罵声を浴びせられながら、俺は一生の親友になんてことをしてしまったんだって、めちゃくちゃ後悔したよ。ああ、これで葛城とも終ったなって。そう思ったら、殴られる痛みなんかよりずっとずっと胸が痛かった」


自業自得なのにね、そう言う大地さんは、もうほとんどテーブルにその大きな体を丸めていて、痛々しくて見ていられず、思わず目を逸らした。

私に話している、というよりは、いまだ葛城さんに懺悔し続けているように思えるのは、きっと古くから大地さんや葛城さんと親交のある大将さんなら、なおさらのことだろう。


よくは見えなかったけれど、なんとなくわかった。

大将さんに指示された店員さんがカラカラと戸を開けて暖簾を店内に運び入れる音や、今日はもう上がれ、と早々に店員さんを帰す大将さんの気配。

日曜日で店内にもちょうどほかにお客さんがいなかったこともあるだろうけれど、それで大将さんがわざわざ閉店にしてくれたんだということに気づいて、胸の奥が熱くなる。
 
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