恋した責任、取ってください。
 
「あ、はい……それは全然、構いません……」


ていうか、なに大胆なことをしているの、私。

打って変わって甘えるように体を預けてくる大地さんの体温や匂いに今さらながら心臓がバクバク鳴りはじめてしまった私は、どうか聞こえませんようにと場違いな願い事をしながら、言われたとおり、大地さんの体を抱きしめ続けながら話の続きを待った。

やがて少し時間をかけて気持ちを整えた大地さんは、しっくりしなかったのか、もぞもぞと頭の位置を調整すると短く息を吐き出して言う。


「しこたま殴られたあと、葛城は息を整える間もなく電話をかけはじめた。『今から会えないか、大事な話がある』って言ってたから、このまま気持ちを伝えに行くつもりなんだろうって思った。待ち合わせ場所を決めると、俺のことは見向きもしないでさっさと行っちゃってさ。まあ当然なんだけど、そのあとだよ」

「その、あと……」

「俺の目の前で待ち合わせ場所を決めたってことは、当然葛城は俺もその場所に来ると思ってたんだと思う。煽られてる実感もあったし、葛城もわざと煽るように電話してたから。でも俺は行かなかった。だって、どんな顔で行けばいいんだって話でしょう。葛城とは気まずいし、殴られた顔を彼女に見せるわけにもいかない。葛城の気持ちとしては〝本気だったらそれでも来いよ〟ってことだったんだろうけどね」

「行かなかったのは、どうして……」

「試合時間残り10秒でボールが葛城に渡ったとき、お互いの本気の温度差に気づいたからだと思う。俺もずいぶん本気のつもりだったんだけど、葛城のそれは俺なんかの比じゃなくて。いくらフリーだからって振られる可能性もあるわけでしょ? でもアイツ、振られようが何しようが、諦める選択肢なんて最初から持ってない目をして俺に向かってきたんだよ。……敵わないなって思うに決まってるよ、そんな目を見せられたら」
 
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