恋した責任、取ってください。
本能的に感じるものって、やっぱりあるよ。
と、大地さんは言う。
「その瞬間、葛城が俺の初恋を終わらせてくれたんだって感じて、ああ、もうこれで楽になれるって思った。心の底からほっとしたし、葛城にだったら喜んで譲ろう、身を引こうって本気で思ったんだよ。それはきっと、葛城の本気とそう変わらないものだと思う。……まだ本人には言えてないままだけど、でも、その気持ちは今も少しも変わってない」
「……じゃあ、葛城さんは、ずっと誤解したままなんですね」
「たぶんね。だから、すぐに言わなかった俺が悪いんだよ。殴られながらでも言えばよかったんだ」
そこまで言うと、ひゅっと大地さんの喉が鳴った。
何かをひどく言い淀んでいるようで、でも今言ってしまわないとこの先もずっと言えないままになってしまいそうな。
そんな相反する気持ちと葛藤しているような沈黙がそれからしばらく続いて、私の心許ない腕に添えている大地さんの大きな手が、カタカタと小刻みに震えていた。
やがて大地さんは言う。
「――だから俺が殺しかけたも同然なんだ。アイツ、昔からけっこうそそっかしいヤツで、待ち合わせ場所に向かう途中の横断歩道の先に俺と似た後ろ姿を見たらしくてさ。……そこに俺はいないのに。呼んでも振り向きもしないのに。赤信号なのも構わず走り出しちゃって、左折してきた車とぶつかって、右足に選手生命も危うくなるくらいの大けがを負った」
「そんな……」
「葛城はそのまま病院に運ばれて、彼女は時間を過ぎても現れない葛城をずっと待ってて。連絡があったのは、事故から3時間くらい経ったあとだった。彼女も俺も急いで駆けつけたよ。手術中のランプがなかなか消えなくて、ホーネットの監督やらコーチやらマネージャーやらがランプが消えるのを固唾を飲んで見守ってて。……俺は、葛城がバスケをできなくなったら俺のせいだって、死ぬほど自分を責めた」