恋した責任、取ってください。
「まあ、なっちゃんがそこまで言うならいいよ。……あーごめん、というか、なっちゃんの言った通りだよ。悪いんだけど、もう少しそばにいてもらいたい」
しばらく逡巡した大地さんは、やがて観念したように苦笑して首の後ろに手を当てた。
苦笑とともに吐き出されたほのかに白い息が街灯や自販機の光にほんの一瞬透けて、あっという間に夜の空気に溶け込んでいく。
一歩の距離がもったいないような気がしていつもよりずいぶんゆっくり歩いたから、そんな私の歩幅に合わせて隣を歩いていた大地さんの体はすっかり冷えているだろう。
飲み物で申し訳ないんですけど、とペットボトルの温かいお茶を2本買って片方を大地さんに渡し、それで手のひらを温めながら公園の中へ進んでベンチに腰掛ける。
踏みしめた地面の砂は思いのほか冷たくて、まだ冬靴を出していないローヒールの靴のつま先からじわじわと冷気が這い上がってくるようだった。
律儀に「いただきます」と言ってからキャップを開けてお茶を口に含んだ大地さんを視界の端に捉えつつ、私も同じようにしてお茶を飲めば、体の奥からじんわりと熱が生まれる。
吐き出した熱い息がいっそう白くけぶって、やっぱりあっという間に冷たい空気の中に溶けて消えた。
「あの、葛城さんが事故に遭ってからも大地さんが現役を続けてきたのはどうしてですか?」
「……うーん、当時、俺が抜けるとチームが立ち行かなくなる可能性もあったんだけど、そうだな、葛城にたくさん恨んでもらいたかったからって気持ちが大きい。奪ったものの大きさの代償に……ていうか、そんなの俺のエゴ以外の何物でもないんだけど、どんなみっともない姿も葛城には見ててほしかったから。罪滅ぼしのつもりなのかな。うまく言えないけど、俺がコートに立ち続けることで葛城への謝罪と恨んでほしい気持ちが少しでも伝われば、って。そればっかり考えてきた3年だった」