恋した責任、取ってください。
 
「葛城のことがあってから、誰かの恋愛対象になるのも怖かったし、自分が誰かを恋愛対象として意識するのも怖かったんだ。また同じことを繰り返すんじゃないかって気持ちが強くて、誰かに見つけられるのも、誰かを見つけるのも、ずっと意識して避けるようにしてた」


観念したようにふっと笑って、大地さんは続ける。


「でも、いつまでも逃げてばかりじゃダメだよね。本気で向き合わなきゃいけないものがたくさんある。バスケにも、チームのみんなにも、葛城にも。それから、なっちゃんの気持ちにも」

「大地さん……」

「返事はもうちょっとだけ待ってて。その前に片付けておかなきゃならないことがあるから。その代わり、全部終わったら一番になっちゃんに会いに行くよ。だから、それまで待っててくれると嬉しい」


それから、わがままばかりでごめんね、と大地さんが笑う。

私の気持ちなんて彼を奮い立たせるためのただのおまけのようなものだけど、でも、それで大地さんが、今まで目を背けて逃げてきたものにきちんと向き合う決心がついたのなら。


「わかりました。それまで待ってます」

「うん。くれぐれもほかの男に目移りしないように」

「ふふ、なんですかそれ」

「ちゃんと見てろってことだよ」


どんな返事が返ってきても、きっと私もきちんと受け止めて向き合うことができると思う。






それから大地さんとは、きっちりマンションの前まで送ってもらって別れた。

5階にある自分の部屋のドアを開けると事情をわかっていた弥生がもんちゃんより先に私を出迎え、話を聞きたくてウズウズした顔をしながら「今日は帰らなくてもよかったんだよー」なんて正反対のことを言う。
 
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