恋した責任、取ってください。
 
「そんなことあるわけないでしょう。落ち着いたら弥生にもちゃんと話すけど、私のことだけで言えば、もう一度告白して、今度こそちゃんと返事をもらう約束をしただけだよ」

「じゃあ、三度目の正直ってやつだ?」

「うん、本当にそうなればいいなって思う。でも不思議と、どんな返事をもらっても大丈夫だって思えるんだよね。今の大地さんは、ちゃんと私のことを見てくれてる気がする。そういうの、なんとなくわかるんだ」


言葉にして改めてそう思う。

いつもどこか掴みどころのなかった大地さんが、初めてきちんと私と向き合おうとしてくれている気配や感触。

実態はないけど、でもわかる。

好きな人のことだもの、わからないわけがない。


「ふーん。でもあたしは全然心配してないけどね」

「え、どうして?」

「だって、どうしようもなく弱ってるときに声を聞きたかったり顔を見たかったりするのが一番の証拠でしょ? 岬さんに何があったのかはわからないけど、お姉ちゃんに話を聞いてもらいたかったってことはつまり、そういうことでしょ」


事もなげに言われて、コートを脱ぐ手が思わず止まる。

そ、そう……なの?

お姉ちゃん、どんな返事が返ってきてもきちんと受け止めて向き合うことができると思ってるけど、こんなに期待を持たせるようなことを言われてやっぱり振られたら、しばらく生きる屍みたいな状態になると思うよ?

けれど、あんまりぬか喜びさせないでくれる?と不審な目を向ける私に弥生は言う。


「たぶん岬さんは、自分の状態も含めて、返事をするにふさわしい舞台を用意したいんだよ。男の人ってそういうとこあるし、だって相手はあたしのお姉ちゃんだし。それに、自慢の姉を三度も振ってみろ、たとえどんなにお姉ちゃんが岬さんのことを好きでも、今度ばかりはあたしが絶対に許さないし」
 
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