恋した責任、取ってください。
 
その後は、時間との戦いである。

ラフな服に着替えたり自分の晩ご飯を用意したり、洗濯機も回したいし、夜9時までにはもんちゃんを散歩に連れて行ってあげたい。

散歩から帰ってきたらお風呂とバスケの勉強もしたいし、飲み会や合コンに出かけなくても部屋の中で十分にいい時間を過ごせる。


「もんちゃん、ご飯食べたら散歩行くよ」


あり合わせの食材でおかずを適当に作り、多めに炊いて冷凍してあるご飯をチンして食べる。

本当は味噌汁もちゃんと味噌を溶いて作りたいけど、寝るまでの時間を少しでも確保したくてついついインスタントに頼ってしまう。

ああ、ずぼらだなあ……。

常々直したいと思っちゃいるけど、弥生が晩ご飯の席にいないときは尚更ずぼらになる。


「さてもんちゃん、行きますよー」


ささっと洗い物を済ませると、洗濯機を回している間にもんちゃんの散歩に出かける。

一日中、ずっと部屋の中で一人でお留守番のもんちゃんは、散歩の時間が大好きだ。


「おおっ!まま、待って!」


小さい体でぐいぐいリードを引っ張って走るもんちゃんに、私はいつも前につんのめりそうになりながら散歩されてしまう。

これじゃあ、どっちが犬でどっちが人間なんだか分かったもんじゃないな、と苦笑いだ。

でも、この散歩の時間が私にはちょっと怖い。

--タッタッタッタッ。


「う、来た……」


足音が聞こえてくると、ビクリと肩が跳ねる。

少しもブレのない、小気味いいリズム。

風を切るように後ろからもんちゃんと私を追い越していく、いつも目深にキャップを被った背の高い男の人の足音が今日も後方からした。

特に何かあるわけではないけれど、雨でも風でも雪の日でも、もんちゃんの散歩をしているこの時間に必ず彼も走るものだから、なんとなく気になり、ついそちらに目が行ってしまう。
 
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