恋した責任、取ってください。
 
昨日までの私の周りには、やたらと背の高い男の人は夜にランニングしているこの人くらいしかいなかったから、男性にまるで免疫のない私にとって、彼は怖さの対象だった。

大概失礼だけど、でも仕方ないじゃない。


かなり人懐っこい性格のもんちゃんは、彼の足音を聞きつけると率先して追いかけてしまう。

相当好きなのは分かるんだけど、ある時、うっかりリードを手から離してしまって、慌てて追いかけ、もんちゃんがランニングの邪魔をしていることを詫びたら、彼に言われたのだ。

『分かってんならリード離すなよ』と。

好きで離したわけじゃありませんと喉まで出かかったけど、キャップのツバの間から覗く私を見下ろす目があんまり冷たかったから、それ以来、私は彼の足音が聞こえてくるとリードを手にグルグルと巻きつけるようになった。

そういうわけで、私は今夜ももんちゃんのリードを手に巻きつけ、彼が追い越していくのを平静を装いつつ待っているのだけれど……。


「おい」

「ひえぇぇぇっ!」


なんだか今日は話しかけられちゃいました!

なんでー!? 私何もしてないのにーっ!!


「ごごごごめんなさい、すいません!」


きっと私が歩いているだけで気に障ったんだと思い、軽く息が上がっているミスター・ランニングマンにペコペコ頭を下げて平謝りする。

もんちゃんのリードはしっかり手に巻いてあるから、その他に気に障ることといったら、もう私の存在そのものとしか考えられない。

明日から散歩コース変えないと!

けれど。


「あー、待って、夏月サン」

「どどどどうして私の名前をっ!?」

「佐藤……なんですケド」


バックバックと心臓の脈動が大変なことになっている私をよそに、ミスター・ランニングマンはキャップを取るとその素顔を露わにした。

佐藤さんって、もしやフローズンアイの!?
 
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