恋した責任、取ってください。
……いや、大地さんは物ではないし、そもそも私にダメと言う権利もない。
でも、弥生に本気を出されたら、納得できてしまうところが悲しいけれど、勝てる気がしない。
けれど弥生は、ひとりあわあわする私をよそに「乗り換えたところで、あたしがお姉ちゃんに敵うわけないでしょ」とため息混じりに言い、ぽかんと口を開ける私を横目に見ながら「こんなこと、あたしに言わせないでよ」とさらにため息を深くする。
それでも弥生の意図するところが汲み取れずに首をかしげると、今度こそ正真正銘のため息が彼女の口から出ていった。
「あのね、お姉ちゃんに惚れられて落ちない男はいないって言ってるの。佐藤さんもそうだったけど、そもそも、内面からにじみ出るものがお姉ちゃんとあたしとじゃ全然違うからね。まあ、鈍すぎるのはなんとかしたほうがいいとは思うけど、そういうのも含めて、お姉ちゃんは強い芯を持つ可愛い人なんだよ」
「弥生……」
「ま、当面の目標はお姉ちゃんかな。身近にいい見習い相手もいるし、恥ずかしいから今まで言ってなかったけど、小さい頃からあたしの目標は、いつだってお姉ちゃんだったから」
「……そっか。ありがとう」
照れくさくなって曖昧に笑うと、弥生も照れくさそうにはにかむ。
そっか。弥生、そんなふうに思ってくれていたんだね。
自分では誰かの目標になるような人柄なんてしていないと思っていたし、そもそも目標になっていると考えたこともなかった。
だけど、他の誰でもない弥生がそう思ってくれているなら、こんなに心強いことはない。
これからも私は私らしく、ときにちょっと使えない社会人みたく斜め方向に仕事をしながら、ときに弱い胃腸と付き合いながら、そうやって毎日を過ごしていこう。
「じゃあ、あたしは戻るね。観戦席、あっちだから」
「うん。試合、楽しんでいって」