恋した責任、取ってください。
 
メガネを押し上げ、目を細めて眉根を寄せ、本当に佐藤さんかどうか、まじまじと確認する。

足下でもんちゃんがリードを咥え、早く早くと訴えているけど、ちょっと待ってほしい。

うーん、うーん……おお、佐藤さん!

その切れ長の目はまさしく佐藤さんだ。


「あ、こんばんは」


本当に佐藤さんだと確認できて緊張がほぐれた私は、ほっと息をつくとペコリと頭を下げる。

挨拶は大事、いついかなる時も礼儀正しく。


「やっと信用してくれた。知った感じの背中だったから、もしかしてと思って声かけたんだけど、やっぱり夏月さんだったんですね。おいとか言ってすみません、普通に怖いですよね」

「ご近所さんだったんですねぇ」

「そうみたいですね」


取ったキャップをくしゃっと手で潰して両手で持つと、佐藤さんは細い目をさらに細くさせ、にっこりと笑ったときのそれにする。

あ……笑えば怖くない。

いつもこんなふうにニコニコしてくれていたなら私だって普通に話せるのになあ。

なんだか宝の持ち腐れっぽくてもったいない。


「あの、時間ありますか?」


そんなことをぼんやりと考えていると佐藤さんが聞いてきて、私は目をパチクリさせた。

もんちゃんの散歩が終わったら洗濯物を干して乾いているのを畳んで、お風呂に入ってバスケの教本を読みながら寝るだけだけど、干すのとお風呂だけできれば、あとは比較的大丈夫だ。

頭の中で、これからの段取りを確認する。

うん、時間はないわけじゃない。


「それなりにありますよ」


佐藤さんの目的はよく分からないけど、そう答えると、彼は、どこら辺がおかしかったのかクククと肩を震わせて笑いながら言う。


「この先の児童公園でいつも折り返すんです。ちょっとつき合ってもらえますか?」

「はあ……」


間抜けな返事をすると佐藤さんになぜかまた肩を震わせて笑われ、そこまで笑われる原因が全く分からない私は微妙な気持ちになった。

なんだこの人、意外と笑い上戸? 
 
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