恋した責任、取ってください。
「それより、時間大丈夫?」
「……え」
「もう7時半だけど」
猛反していると、いつの間にやらスマホを手に持った弥生が、それをピコピコ操作しながらこちらに目を向けることなく淡々と言い放った。
ウチの会社の始業時間は9時。
会社までの道のりは1時間と少しだから、そろそろ部屋を出ないとマズい時間……というかいつもならとっくに出勤しているんですけど!
「うひゃあぁぁ!! 早く言ってよぉぉ~!!」
慌てて弥生の部屋を飛び出し、バタバタと洗面台に駆け込み歯磨きと洗顔をマッハで終える。
自室に戻ると、バサバサと着ているものを脱ぎ捨て、ハンガーに掛けてあるブラウスとカーディガンを羽織り、スカートに足を通す。
メイクをする時間も、朝ご飯を悠長に食べている時間ももちろんあるわけないので、小さなローテーブルの脇に置かれた通勤バッグを引っ掴んで中を覗き、化粧ポーチが入っていることを確認するとスッピンで出勤する覚悟を決める。
あとで会社のお手洗いで塗りたくろう。
最後に春コートを腕に引っ掛け、もんちゃんの出入りがあるので部屋のドアを開け放ったまま玄関へ急ぎ、わたわたとパンプスをつっかけた。
「もんちゃんのご飯とお水よろしくね!」
それだけ言い残すと、律儀にお見送りに来てくれたもんちゃんの頭を一撫でし、弥生の「はーい、いってらっしゃーい」というなんとも呑気な声を背中越しに聞いて部屋を出た。
「急げ急げ……っ!」
マンションを出ると、いつもは歩いて向かっている駅までの道を私なりの全力疾走で駆ける。
お世辞にも速いとは言えないものの、飲んで記憶を失った挙げ句に遅刻なんて社会人としても人間としてもどうなの私!? と自分に鞭打ち、どれだけ息が上がっても根性で走りきった。