恋した責任、取ってください。
 
「恵麻さん」

「んー?」


私が黙りこくっていた間、片手間にビールを飲んでいた恵麻さんに声をかけると、ジョッキを置いた彼女が大地さんそっくりののんびりとした調子で相槌を打ってくれて、何の脈絡もないのに少し泣きそうになってしまった。

恵麻さんには話しておこう。

同情票を集めて大地さんの“色々”を教えてもらおうとか、味方についてもらおうとか、そういうん全然じゃなくて、恵麻さんにはただ知っておいてもらいたいと純粋に思う。

一つ大きく息をつくと、覚悟が揺るがないようにテーブルの上の手をきゅっと握りしめ、顔を上げて恵麻さんと向き合い、口を開く。


「恥ずかしい話なんですけど、私、今まで一度も男の人とおつき合いしたことがないんです。それどころか、恋すらしたことなくて。正直に言ってしまうと、自分がちょっとおかしいんじゃないかと思って悩んだ時期もあったんです。でも結局、そうして焦ったところでどうにもなりませんでしたし、誰にも心が動かなくて」

「じゃあ、大地が初恋なんだ!?」

「え、はい。一目惚れです」

「わぉ!我が弟ながらやるわね~、あの子」

「……」


あ、あれ?

ドン引きされてもおかしくない内容なのに、どういうわけか恵麻さんの合いの手が明るすぎるんですけど……これって一体、何でしょう。

ヒュ~と口笛でも聞こえてきそうな恵麻さんの口振りに唖然としてしまって、声が出ない。

軽い話ではないはずなんだけど、というか、こういう反応は一つも予想していなかったから、こちらもどういう反応をしたらいいのか分からなくて、ただ恵麻さんを見つめてしまう。

と。


「相手はともかく、なっちゃんは初恋を大事にしてきたってことじゃん。そういうの、私は全然ありだと思うけどな。それに、恥ずかしい話だなんて思う必要がどこにあるの?」
 
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