恋した責任、取ってください。
 
御手洗コーチは、彫りの深い顔立ちがワイルドなイケメンさんで、年齢は35歳。

膝の故障が原因で現役を退くまでは“ブル”というコートネームでその名を轟かせていた、小さくて有名な選手だったという--身長168.4㎝、170㎝の恵麻さんよりちょっぴり低い。

ブルは牛を意味する“bull”=闘牛のように頭から突っ込んでいく荒々しいプレースタイルから由来しているらしく、身長が高いとそれだけで有利なバスケットにおいて、小さいながらも体格差をものともせずに真正面から向かっていく勇猛果敢な姿は、見ていて心が透くような思いだったと、サポートチームでの歓迎会のときに恵麻さんがうっとりとした表情で言っていた。


「どうよなっちゃん、迎えを呼べる相手がいるって羨ましいでしょー。なっちゃんも早く大地を呼べるようになるといいわね!」


要件だけ伝えてすぐにスマホを耳から離した恵麻さんは、くるんと私のほうを向くとニッコリ笑ってそう言い、ビールの残りを飲み干す。

ほんと、恵麻さんの言った通り、羨ましい……。

私が大地さんを呼べるようになる日は一体いつになることやら、って感じで苦笑が漏れる。


「……が、頑張ります」

「うん!でも、ソウ君でもいいのよ?」


すると、恵麻さんは意味不明なことを言う。

だからなんで大地さんとセットみたいに佐藤さんも所々に挟んでくるんですか、佐藤さんとセットなのはザキさんですよ、あの2人、めっちゃ仲良しさんなんだから離さないであげて。

さっきとは違う意味で苦笑を漏らしながら、頬杖をついて「早く来ないかな~」と幸せそうに呟く恵麻さんの横顔をちらと見やる。

うーん、お酒の席は片手で数えられるくらいしか行ったことがないけど、とろんとした目といい、くったりした感じといい、これはもしや、けっこう出来上がっているんじゃ……。
 
< 72 / 217 >

この作品をシェア

pagetop