恋した責任、取ってください。
普段のクールビューティーとのギャップがたまらなく可愛く思えるのは、きっと新婚ホヤホヤなコーチならひとしおなことだろう。
でも、私には刺激が強すぎてリアクションが定まらないから、そういう生々しいことはできたら言わないでもらえると助かるのが本音だ。
まったく、やれやれだ。
そんな感じでしばらく恵麻さんの相手をしていると、お店の扉がガラガラと開けられ、暖簾をくぐってワイルドイケメンなコーチが現れた。
「こっちです!」と手を挙げてコーチを呼ぼうとすると、しかし後ろからやけに見覚えのある大きい人も続いて入ってきて、私は自転車マナーである"右折します"のサインよろしく腕を直角に曲げたまま、しばし目を瞠った。
あ、あれ、大地さん!? なんで!?
さっきまで大地さんの話をしていたから幻でも見ちゃっているのでしょうか……。
と思っている間に。
「ごめんね、天沢さん。恵麻、大地と違ってすぐ酔っ払っちゃうから大変だったでしょう。ほら、帰るよ恵麻。しっかり立って」
くったりしている恵麻さんと呆けたウズラ顔の私のもとに迷うことなくやってきたコーチは、一言私に詫びると「ん~」と可愛い声を出す恵麻さんの肩にそっと手を置き、優しく促した。
大地さんもすぐそばまで来ていて、しきりに私に向かって"ごめんね"と片手を顔の前に持ってくる仕草をしているので、どうやら私の妄想が生み出した幻ではないらしいことが分かり、妙なところでホッとしてしまった私だ。
「いえ、全然。でも、どうして大地さんも……」
「恵麻が頼人さんと間違って俺に電話したの。今日はスクールの日だったでしょ、俺も飛び入りでコーチしてたから一緒にいたってワケ」
その質問に答えてくれたのは大地さんだ。
そして、続けてこうも言う。
「恵麻のヤツ、一方的にしゃべって通話を切るかと思ったらそうじゃなくて。『どうよなっちゃん』って聞こえたから、俺はなっちゃんの迎えに来たんだ。夜道は危ないでしょ?」