恋した責任、取ってください。
「えー、そんなに全力で否定しなくても」
「そうなんですけど……」
「じゃあまあ、話したくなったらで」
「……そうさせてもらえると助かります」
でも、大地さんとの間の空気が極端に重くならないのは、彼が持っている和み系の雰囲気のおかげと気を使ってもらっているからだ。
普段は天然なのに、なぜかこういうところは敏感というか線引きが絶妙というか、無理に話させようとしない優しさが途端に表に現れる。
こういうギャップ、ズルいんだよなぁ……。
ザキさん辺りだとしつこく聞いてくる図が容易に想像できてしまって、苦笑が零れる。
そうこうしている間に目前には一際煌々と明かりを放っている駅の改札口が迫っていて、ぽっかりと口を開け、人を飲み込んだり吐き出したりと、金曜日の夜らしく忙しく働いていた。
この近辺に職場がある人は別のところへ、そうじゃない人はこの近辺へ足を運ぶといった具合に、上手く人口が循環されているらしい。
数分ごとに電車が発着する様子を初めて見たときは感動より驚愕したものだったけど、大学からこっちに出てきていれば、それがもう普通の光景として私の中にインプットされている。
改札を通ってホームに降り、次の電車を待つ。
ほんの少し前に電車が出たらしく、ホームにはまだ僅かに電車が速度を上げて線路を走っていった風が残っていて、涼しくて気持ちいい。
今日、恵麻さんと飲んだ『九兵衛』は会社近くの路地裏にひっそりと店を構えている、知る人ぞ知るといった感じの居酒屋さんだった。
ということは、バスケスクールに飛び入りで参加しコーチをしていたという大地さんも、ブルスタの練習が終わってからもずっとこの近くにいたわけで、行動範囲の狭さが少しおかしい。
密かに笑っていると。
「なっちゃんはつくづく小さいなぁ。通勤ラッシュのときとか、何気に潰されてそうで恐いよねって前にソウと話したことがあるよ」