恋した責任、取ってください。
 
降りる乗客を待って乗った車内は幸い程よく空いていて、大地さんと私はドア付近の席に並んで座り、それから約1時間の移動をした。

けれど、間を繋ごうと話をしてくれる大地さんの声はどこか遠くから聞こえてくるようで、私は相槌を打つだけで精いっぱいだった。





最寄り駅に着き、街頭に照らされた部屋までの道を歩いていると、ちょうど以前までもんちゃんの散歩の時によく佐藤さんと寄っていた児童公園の前の自販機で大地さんが立ち止まった。

駅と部屋の中間地点。

あれ?と思っていると。


「ちょっと待って。水飲んだほうがいいよ」

「え?」

「なっちゃん、具合悪そう」


小洒落た長財布をお尻のポケットから引き抜いた大地さんは、私の返事を待たずに小銭を投入し、ミネラルウォーターのボタンを押した。

ガコンとやや重量感のある音を立ててペットボトルが落ちてくると、それを取って「公園で休んでいこう」と私を見下ろしてほんのり笑う。

思いがけず垣間見てしまった大地さんの“色々”に加えて、弥生と交代するために早く帰ろうとしていたけど、移動に1時間もかかってしまえば結局は意味がないんじゃないかとついさっき気づいて、落ち込んだせいかもしれない。

具合は悪くないんだけど、大地さんにはそう見えもおかしくない様子だったらしい。


大地さんはスタスタと公園の中に入っていってしまったので、弥生に申し訳ない気持ちを抱きつつも、私もあとに続いて公園に入る。

大地さんとまだ一緒にいたい。

結局、その気持ちには勝てなかった。


「落ち着きました。ありがとうございます」

「うん」


ベンチに腰掛け、キャップを外してから手渡してもらったミネラルウォーターを口に含むと、水の冷たさが全身に行き渡って、具合は悪くなかったはずなのに本当に落ち着いた。
 
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