恋した責任、取ってください。
すると、涙を拭いながら必死で嗚咽をこらえている私の背後から前触れなくスッと影が差した。
すぐ背後で感じる人の気配に、もしかして大地さん!?と一瞬にしてドクンッと心臓が大きく脈打ち、驚きのあまり出ていた涙も引っ込む。
「あっれ~、ウズラがうずくまってる!」
「うわぁぁっ、高浜さん……!」
けれど、いい感じに韻を踏みながら声をかけてきたのは高浜さんで、全く予想していなかった人物だけに思いっきりビクッとしてしまった。
ドックドックと跳ねる心臓を服の上から握り、ひとまず、はー……と脱力しながら、大地さんがわざわざ私を追いかけてくるはずがないし、もし仮に追いかけてこられてもそれはそれで困っただろうと自分の心と折り合いをつける。
泣いているところを見られたのはもちろん恥ずかしいけど、大地さんと同じくチームで一番の古株だからだろうか、なんとなく高浜さんになら変に取り繕わなくてもいいような気がして、慌てて顔を隠すことはなかった。
というか、何もかもがすでに遅いのだけど。
と。
「エレベーターを降りたら角からスカートの端っこが出てるのが見えたから、気になって覗いてみたんだけど……うーん、どうした?」
私の正面に回り腰を下ろした高浜さんは、触れないのもどうかと思ったのか、私の頬や目元に残る真新しい涙のあとを指差し聞いてきた。
言ってもいいものか少し迷ったものの、ここまで見られてしまったからには誤魔化しても仕方がないと思った私は、おずおずと口を開く。
「……ちょっと、失恋を、しまして」
「失恋? 誰に?」
「大地さん……です」
「ほぉ、それはそれは。ウズラには悪いけど、なかなか面白いことになってきた感じだね」
「え、」
けれど、親身になって話を聞いてくれるのかと思いきやどっこい、相槌を打つたびに高浜さんの表情が楽しげなそれに変わっていく。
なんだろう、この明け透けな感じ。
すごく嫌な予感がする……。