理想の恋人って!?
 言葉のないまま、私の家の前まで到着した。晃一の手が離れ、私は門扉の前で立ち止まって晃一に向き直る。

「今日はありがとう。楽しかった」
「そう言ってもらえてよかった。計画してたのと違う展開になったけど」
「計画って……?」

 私が見上げると、晃一が「何でもない」と言ってわずかに首を傾げた。そしてそのまま顔を近づけてきたかと思ったら、私の唇にふわりとキスが落とされた。

 一瞬のことで、目を閉じる間もなく彼の唇が離れていく。

「こ、晃一!?」

 ファーストキスだとかそういうこと以前に、晃一にキスされたことに驚いて、嬉しい反面、戸惑ってしまう。そんな私に晃一が照れた笑みを見せた。

「デートの締めくくりは、やっぱりこうでなくちゃ、と思って」
「あ……」

 そっか。晃一の理想のデートはこういう形なんだ。

「おやすみ」
「お、おやすみなさい……」

 胸がじくじくと痛んで、晃一の笑顔にそれだけ返すのが精一杯だった。きびすを返して歩きかけた晃一が、ふと足を止めて振り返った。

「明日さ、大学のグラウンドで一時からサッカーの練習試合があるんだ。もし予定がなかったら、観に来ないか?」
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