汝は人狼なりや?(※修正中。順を追って公開していきます)
 3人でどうしたらいいのかを考えている最中のことだった、サッ──と、誰かが迷いなく僕の隣を走り抜ける。

 見ると、それは寺山さんで、台の上から片手で持てそうな鈍器を1台だけ持ち上げると、素早く狼谷くんのもとへ駆け寄り──本人に気付かれるよりも前に、思い切り腕を振り下ろした。

 ゴッ……と、思わず耳を塞ぎたくなるような鈍い音が鳴るや否や、狼谷くんは「うっ」と呻き声をあげ、ズルズルとその場に倒れ込んだ。狼谷くんが握っていた拳銃も近くに滑り落ちる。わずかながら、頭から血が流れているのが見えた。


「はぁ……はぁ……」


 自分でやった行動といえど、とても怖かったんだろう。寺山さんは激しく呼吸を繰り返し、動かなくなった狼谷くんを見つめながら呆然と固まっていた。

 そんな寺山さんを差し置いて、今の今まで特に目立った行動をせず、端っこで大人しく水無さんと立っていた西園寺さんが、そっと狼谷くんのもとへと近付き、口元に自らの手をかざす。


「……息は、していますわ」


 どうやら呼吸の有無で狼谷くんの生死を確かめたらしい。頭からわずかながら血を流していて、そのうち死んでしまわないか心配ではあるけれど……。今はまだ、生きている。うまいこと気絶したっていうことなのかな?

 西園寺さんは表情を変えないまま、スタスタと迷いなく台まで移動したかと思えば、重量のありそうなロープの束を手にして戻ってきた。西園寺さん、軽々しく持ち上げているけれど、僕が思っているほど重くないのかな……?


「西園寺さん? 何を……?」


 その一連の流れを見ていた如月さんが尋ねると、西園寺さんは相変わらず表情を変えないまま口を開く。……妙に慣れた手つきで、狼谷くんの手足をロープで縛りながら。
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