汝は人狼なりや?(※修正中。順を追って公開していきます)
「見ていてお分かりになられませんか? また狼谷さんが動き出したら厄介ですもの。縛っておいたら安全でしょう?」

「それは……まあ……」

「男子諸君。申し訳ないのですけれど、狼谷さんをそこの壁まで移動させてくださる?」


 そこ、と指を差したのは、壁から突き出て、剥き出しになっている鉄の棒。脆そうな建物だからこそ、鉄の棒の一本や二本、剥き出しになっていてもおかしくはない。

 けれど、問題はそこじゃなくて、誰がどう見てもその鉄の棒に狼谷くんを縛り付けようとしているのが目に見えた。

 ロープで身体を縛り、尚且つ鉄の棒と一体化させるように行動を縛るこの行為……。頭ではこれが今一番の最善策なんだろうと考えていても、始終見ていて気持ちのいいものではない。

 ……決して、人をひとり殺めている狼谷くんのことを、かばおうっていうわけではないんだけれど。

 狼谷くんの身体を西園寺さんに言われるがままに縛り付けた男子生徒たち。といっても、行動にうつしたのはスポーツの部活に入部している体力のある子たちで、僕は眺めているだけだったけれど。


「さて……」


 僕と同じように眺め、無事に縛り付け終えたのを見届けた西園寺さんは、ひとつ深呼吸をすると、ゆっくりとその場にいる全員を見渡す。そして、重い口を開いた。


「自らを人狼だと名乗る狼谷さん。その狼谷さんに殺された上杉さん。……皆さん、これからどうします?」


 ずっと冷静でいる西園寺さんのことを、すごいなぁと思っていたけれど……何故だろう?上杉くんが死んでしまっても冷静でいる西園寺さんのことが、少し怖く思える……かも。

 僕らのことを見渡すその両の瞳は、とても冷酷なものに見えた。西園寺さんが何を考えているのかは、少しも読み取ることが出来ない……。
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